被災地へ届け、空手の力!!四国から東北へ元気のエール。第28回全四国空手道選手権大会

2011年4月10日 高知・くろしおアリーナ

空手LIFE 2011年6月号掲載  Text & Photos/林田哲臣


決勝戦は、辻と酒井の対決。辻の上段への蹴りを必死にブロックする酒井。二人の意地がぶつかり合った。

酒井も負けずに上段廻し蹴りを放つ。一進一退の攻防が続いた。
 
辻は下突きを決めて、ペースを握り始める。わずかな差ではあったが、やや辻が有利か。

一般上級の部決勝
<徳島北東あわじ支部> <高知支部>

○辻健介 VS 酒井瑞樹×

本戦5−0

「思うような組手ができませんでした。また反省して稽古します」

四国大会2連覇を果たした辻から出た言葉は意外なものだった。

緒戦からアグレッシブな組手を見せ、準決勝では佐藤公智を合わせ一本で下した。

決勝では地元の強豪・酒井瑞樹と対戦。酒井は兼光秀治、梅田直紀という強豪と立て続けに闘っての決勝進出となった。とくに梅田戦では強烈な下段に苦しみながらも、粘り通して勝利をもぎ取る価値ある一戦となった。

序盤は中段の打ち合いから始まったが、辻が上下に振り分けた大技の蹴りを使い始めたところから試合が動き始めた。

酒井は突きと下段を効果的に入れ、得意とする上段廻し蹴りも放ったが、辻を捉えるまでには至らなかった。

一方、辻は上段への廻し蹴り、カカト落とし、中段への飛び後ろ蹴りなど、中盤から縦横無尽に蹴り技を放ちながら、的確な下段でダメージを与えていった。

試合は辻が流れを掴み、判定で勝利した。



辻は上段への蹴りで揺さぶりをかけつつ、確実に下段蹴りをヒットさせて、判定勝利をものにした。これで全四国大会2連覇だ。
 
3位決定戦は、佐藤公智と梅田直紀が激突。梅田が本戦5−0で佐藤を下した。


前回に続き、全四国大会を制した辻。次は、5月のウエイト制で上位入賞を狙う。

「今回は運よく勝つことができましたが、緒戦から緊張して、やろうと思っていた動きがまったくできませんでした。いつも蹴りに偏った組手になってしまうので、今回のテーマは蹴りに頼らない試合だったんですが、うまくいきませんでした。自分が納得できる試合ができれば嬉しいんですが……」

こう語る辻は、師匠の前川憲司に劣らない努力の稽古で実力をつけてきた。

夕方まで仕事をこなすと、そこから毎日約5時間の稽古を欠かさない。

しかもその稽古は、土日も関係なく続けているという。
「疲れが溜まって休んだほうがいいなと思った時に休むようにしているので、曜日でスケジュールを区切ったりはしていません」

ここまで辻が稽古にのめり込むのは、“いつか自分が納得できる試合をしたい”という一念からきているようだ。
「ウエイト制までまだ時間があるのでもっと稽古して、自分が思うような組手を目指します。ウエイト制は世界選抜もかかっていますから」
 世界を視野に入れた辻がウエイト制で理想の組手を目指す。



会場には、衆議院議員の中谷元先生、元参議院議員の神取忍先生、元ムエタイ王者の武田幸三さんらが顔を出した。


今大会は未曽有の大災害となった東日本大震災から、約1ヵ月後となる、4月10日に開催された。

被災地へのお見舞いの気持ちを胸に刻み、試合の気合いと熱気で東北に元気を届けるために、参加選手は全員道着の袖口に「頑張ろう東北!」と書かれた真紅のワッペンを縫いつけて試合に臨んだ。

また、会場入口では大会主催の三好一男師範自らが募金箱を持ち入場者へ募金を呼びかけた。さらに三好師範とともに野本尚裕も、募金箱を手に頭を下げた。

最終的には、35万9549円もの募金が集まった。

31階級にわかれたトーナメントはいずれも白熱し、とくに一般上級にはウエイト制大会にエントリーしている選手が多数参加し、レベルの高い闘いを展開。一般上級の部決勝戦は、辻健介と酒井瑞樹が争い、上位4名中3名を四国勢で占めることとなった。

3位に入賞した梅田直紀は、豪快な下段廻し蹴りで対戦相手を苦しめ、準決勝の酒井戦では緊迫の接戦を演じた。

4位に入賞した佐藤公智は、3回戦で滋賀の強豪・中嶋幸作と最終延長に及ぶ激闘を繰り広げた。

最終的には辻が頭ひとつ抜けた実力で連覇を果たしたが、名勝負と熱戦の連続のトーナメントとなった印象が強く残った。



準決勝の酒井と梅田の対決は。延長までもつれる接戦となった。
 
酒井は梅野の下段蹴りに苦しむが、中段突きやヒザ蹴りで圧力勝ちを収めた。

もう一つの準決勝は、辻と佐藤公紀が激突。
 
辻と佐藤の試合は、下段の蹴り合いとなる。やや辻が上回り、佐藤を下した。

下段蹴りを有効に使った辻は、一回戦から快調に飛ばした。
 
辻は、下段を武器にウエイト制ではどこまで勝ち上がることができるのだろうか。

四国大会といえば豪華ゲストで有名だが、お馴染みとなった大会会長を務める衆議院議員の中谷元先生をはじめ、元ムエタイ王者の武田幸三さん、元参議院議員の神取忍先生が今年も会場に訪れた。
 また、かつてテレビのドラマとなった『ケンちゃんシリーズ』で国民的アイドル子役たった宮脇康之さんも、ゲストとして来場。ケンちゃんシリーズの助監督が『地上最強のカラテ』の監督を務めた縁で、宮脇さんは池袋の総本部道場に入門していたというから驚きだ。三好師範とは兄弟弟子の関係にあたる縁で、今大会の来場が実現した。現在は歌手としても活躍され、大会後のパーティでその歌を披露してくださった。
 最後に、大会後のパーティでは昨年に引き続き、サプライズ誕生会を開催。昨年は緑代表の誕生日をお祝いしたが、今年は緑代表に加えて、藤原師範の誕生日も盛大にお祝いして締めくくった。



東日本大震災の影響がありながらも、大会は大成功。四国から、東北へ向けてのエールにも思えた。

三好副代表が自ら、東日本大震災の被災者へ向けての義援金を集めて回った。

四国の雄・野本尚裕も義援金活動に参加

新極真ロゴマークの髪型をした少年が登場。

選手たちは、『頑張ろう東北』のワッペンをつけて全力ファイトをみせた。

子供たちの演武では、元気のある突きや蹴りが見られた!東北へ届け、この思い!!

大会終了後、8日後に誕生を控えた緑健児代表へ誕生日ケーキが贈られ、さらに誕生日が近い藤原康晴師範も加わっての合同のサプライズ誕生会が行なわれた。