第30回全四国空手道選手権大会
2013年4月21日◎くろしおアリーナ
カラテライフ2013年7-8月号 Text/伊藤翼 Text/増村貴宏
チャンスと見るや、一気呵成に攻め込む金森。得意の上段ヒザ蹴りが火を噴いた。

30回のメモリアル大会を優勝で飾った金森。兵庫中央支部の絆が生んだ勝利だった。
 
35歳のベテラン・金森と、道真会館・山下が激突。ユース世代がいない決勝戦も、最近では珍しい光景だ。

力強い組手を見せた山下。全四国大会には4年連続の出場となったが、年々、着実に力をつけている。
 
反撃のきっかけとなった金森の中段前蹴り。山下はスタミが尽きたのか、ピタリと動きが止まってしまった。

三好師範は「35歳ながら、最後に踏ん張って新極真の砦を守ってくれたのには感動しました。日頃の稽古の成果だと思います」と、金森に賛辞を送った。
 
一般男子上級の部入賞者と、緑代表、三好師範、豪華ゲストの記念撮影。

50歳ながら3位入賞をはたした井上達二。魂のこもった組手は、多くの人の感動を呼んだ。今大会、陰のMVPと言っていいだろう。
 
昨年のこの大会で15歳ながら準優勝をはたし、さらなる飛躍が期待された江口雄智。準決勝でもキレのある動きを見せたが、山下の上段廻し蹴りで技有りを奪われれてしまった。

初戦となった二回戦で惜しくも敗れた澳本だが、三好師範は「光るものがあった」と愛弟子の今後に期待を寄せた。
 
昨年の覇者・酒井瑞樹は金森を攻略し切れず、初戦で敗れた「すべてをガラリと変えなければダメ」と酒井。ウエイト制での巻き返しを誓う。

入賞者と支部長・責任者による記念撮影。30回大会も大成功で幕を閉じた。


数多の強豪選手を輩出し、熱闘に彩られてきた全四国大会が、今年で30回を迎えた。過去の歴史に負けず劣らず、各部門でメモリアル大会にふさわしい闘いが繰り広げられた。

昨年の覇者・酒井瑞樹が初戦で敗れる波乱の中、一般男子上級の決勝戦に駒を進めたのは、35歳の金森俊宏と道真会館の山下力也だった。金森は最大の山場となった酒井との二回戦で、182cmの長身を生かした前蹴り、ヒザ蹴りを的確にヒットさせ、体重判定で勝利を収めると、続く準々決勝、準決勝も突破し、2011年の全中国大会以来となる、ふたつ目のブロック大会制覇の王手をかけた。

ところが、もう一方のブロックから勝ち上がってきた19歳の山下の勢いは、それをしのぐものがあった。圧巻だったのは準決勝。昨年のこの大会で準優勝をはたした江口雄智から、97kgの体躯とは思えぬ鮮やかな上段廻し蹴りで技有りを奪い、本線で決着をつけた。

頼みのユース世代が次々と姿を消し、記念大会で他流派への王座流出危機という状況に、金森は「プレッシャーがありました」と語る。試合は、体重で20kg上回る山下が圧力をかけ、得意の中段、上段廻し蹴りで攻め込んでいく。

だが、本線も残り1分というところで金森が放った中段前蹴りをきっかけに、試合の風向きは大きく変わった。所属する兵庫中央支部の山田一仁支部長が「金森選手の一番いいところは、勝負どころがわかっていることです。チャンスという時に一気呵成に攻める爆発力がある」と語るように、ステップを使っての突き、ヒザ蹴り、カカト落としで一気にスパートをかけ、見事に優勝をはたした。

「正直、気持ちがしんどいなと思ったりもしました。山田師範、(兼光)のぞみ先生、道場生のみなさんが背中を押してくれたのが、がんばれた要因だったと思います」

トーナメントを振り返る金森は何度も仲間への感謝を口にした。30年の歴史を持つ全四国大会が、人と人との友情で紡がれてきたように、金森が優勝した背景にも、支部の仲間との強い絆があった。

この結果に悔しさを覚えた若手選手が奮起すれば、今後はさらに盛り上がるだろう。31回大会に向けた闘いはすでに始まっている。




世界へのスタートライン、篠原茉奈が同門決勝を制す
一般女子フルコンタクト決勝は、篠原と林の高知の同門対決となった、至近距離で激しく打ち合う。

林はスピーディーな動きから鋭い蹴りを放っていく。
 
甲乙つけがたい勝負だったが、最後は5-0で篠原に軍配。

このふたりが高知支部を引っ張る存在になる日は近いのかもしれない。篠原は一般の大会でうれしい初優勝となったが「気持ちを切り替えてウエイト制に向けてがんばりたい」と、兜の緒を締めた。
 
ワールドカップ帰りの篠原葉子が、選手の先導を務めた。

今年も盛大に開催された打ち上げパーティー。さまざまな試練を乗り越え、大会が大成功に終わったことで「みんなで『同期の桜』を歌っている時は涙が出そうだった」と三好師範。

大会パンフレットに掲載された何枚もの写真には、主催者の三好一男師範を中心に、子供から著名人までたくさんの笑顔があふれていた。全四国大会を開催して以来、一度も途切れることなく30回を迎えられたのは、支えとなった周囲の人々と、心の付き合いを重ねてきたからだろう。

だからこそ三好師範は、この30回大会を「友情の結晶」と表現した。その中でも今回は、これまで築きあげてきた結束力が、とくに試される大会だったという。
「3月に私の母親が亡くなったり、大会前もワールドカップで道場を留守にしなければならなかったので、今年は30回の歴史の中で最大の試練でした。みんなの協力のありがたさを見に染みて感じました」

そんな三好師範の思いに応えるかのように、一般女子フルコンタクトの決勝戦には、高知支部の門下生である、篠原茉奈と林さいかが勝ち上がった。昨年の準決勝の再現となったが、ふたりは1年前からさらなる成長を遂げていた。

突き、ヒザ蹴り、下段廻し蹴りが飛び交う接近戦は、まったくの互角。最終延長戦でも両者の動きは衰えなかったが、林の顔面殴打による注意1が響いたか、最後は5-0で篠原が勝利を収めた。

林は昨年に続き、篠原に連敗を喫したが「負けたことは悔しいですけど、昨年と違って自分の力は出せたので、その面に関しては良かったと思います」と収穫を口にする。これが一般の大会での初優勝となった篠原は「今までは自分に負けて試合の途中で気持ちが切れてしまうことがあったんですけど、今回は最後まであきらめずに闘えました」と振り返った。

全日本ウエイト制大会を見据え、高い意識を持って今大会に臨んだふたりが共通して口にしたのが、昨年の全四国大会の覇者であり、第5回カラテワールドカップですばらしい闘いを見せた、篠原葉子の名だった。その活躍に刺激を受けたことが支部全体の士気を高め、相乗効果を生んでいるという。

三好師範は「篠原葉子選手を含めた3人は、4年後のワールドカップを狙わせられるところまで来ています。ウエイト制大会で頭角を現してほしい」と期待を込めた。新たなふたつの才能が、花を咲かせる日は近い。


三好一男師範 第30回大会コメント

「金森選手は35歳ながら、最後に踏ん張って新極真会の砦を守ってくれたことに感動しました。準優勝の山下選手も全日本クラスの選手をふたり破ったわけですから、賞賛に値すると思います。篠原選手と林選手には『4年後のワールドカップを一緒に目指すか?』と言ったら目が輝いていたから、がんばるじゃないですかね。私自身も3月に母親が亡くなったり、大会前の10日間をワールドカップのために抜けなければならなかったので、この30回大会が今まで一番キツかったです。『これを乗り越えられたら、この先どんなことでも乗り越えられるからがんばれ』と自分自身に言い聞かせていました。今大会は30回目の節目でしたけど、本当にみんが一致団結してくれました。門下生、仲間、後援者の人たちの友情の結晶が、30回大会の成功に結びついたんだと思います」


高知支部同士の決勝となった一般男子新人・中級の部は、中城祥平が濱口宏洋を下して優勝。
 
一般女子セーフティの部は、岡野零が伊達明子に勝利を収めた。

壮年(35歳以上〜40歳未満)の部は、尾崎慎一が久米大介を下した。
 
壮年(45歳以上〜45歳未満)の部は、松江正芳が黒帯の貫禄を見せ、本線3-0で山脇義英に勝利。

高校男子上級の部は、松田拓人が廣田将大に本線5-0で勝利。
 
高校男子初級の部は長船拓弥が山撫ヒ平を下した。

レベルの高い試合を見せた中学3年男子上級の部は、西尾総悟が宮迫帝岳に勝利。
 
小学6年男子上級の部は、戎永晟が上段廻し蹴りで技有りを奪い、本戦で堀江俊明をくだした。

型・中高生(初級)の部は、12歳の山中湧太が優勝。
 
型・中高生(初級)の部は、濱彩羽が優勝。
 
型・団体は、息の合った動きを見せた福岡A(手嶋英士・手嶋龍栽・吉田勇大)が優勝。