数多の強豪選手を輩出し、熱闘に彩られてきた全四国大会が、今年で30回を迎えた。過去の歴史に負けず劣らず、各部門でメモリアル大会にふさわしい闘いが繰り広げられた。
昨年の覇者・酒井瑞樹が初戦で敗れる波乱の中、一般男子上級の決勝戦に駒を進めたのは、35歳の金森俊宏と道真会館の山下力也だった。金森は最大の山場となった酒井との二回戦で、182cmの長身を生かした前蹴り、ヒザ蹴りを的確にヒットさせ、体重判定で勝利を収めると、続く準々決勝、準決勝も突破し、2011年の全中国大会以来となる、ふたつ目のブロック大会制覇の王手をかけた。
ところが、もう一方のブロックから勝ち上がってきた19歳の山下の勢いは、それをしのぐものがあった。圧巻だったのは準決勝。昨年のこの大会で準優勝をはたした江口雄智から、97kgの体躯とは思えぬ鮮やかな上段廻し蹴りで技有りを奪い、本線で決着をつけた。
頼みのユース世代が次々と姿を消し、記念大会で他流派への王座流出危機という状況に、金森は「プレッシャーがありました」と語る。試合は、体重で20kg上回る山下が圧力をかけ、得意の中段、上段廻し蹴りで攻め込んでいく。
だが、本線も残り1分というところで金森が放った中段前蹴りをきっかけに、試合の風向きは大きく変わった。所属する兵庫中央支部の山田一仁支部長が「金森選手の一番いいところは、勝負どころがわかっていることです。チャンスという時に一気呵成に攻める爆発力がある」と語るように、ステップを使っての突き、ヒザ蹴り、カカト落としで一気にスパートをかけ、見事に優勝をはたした。
「正直、気持ちがしんどいなと思ったりもしました。山田師範、(兼光)のぞみ先生、道場生のみなさんが背中を押してくれたのが、がんばれた要因だったと思います」
トーナメントを振り返る金森は何度も仲間への感謝を口にした。30年の歴史を持つ全四国大会が、人と人との友情で紡がれてきたように、金森が優勝した背景にも、支部の仲間との強い絆があった。
この結果に悔しさを覚えた若手選手が奮起すれば、今後はさらに盛り上がるだろう。31回大会に向けた闘いはすでに始まっている。
|