匠直伝!ズバッとわかるテクニック

突き

さまざまなテクニックのコツを、その技のエキスパートに聞く「匠直伝! ズバッとわかるテクニック」。 今回のテーマは「突き」。解説を務める匠は、第26回全日本大会で8位に入賞し、第6回世界大会にも出場。さらにボクシングで全日本ミドル級新人王に輝くなど、正確無比で力強い突きを得意とする川原奈穂樹参段です。


突きが強くなれば、蹴りも当たる!

突きは単体の武器としてはもちろん、ほかの技を生かすためにひじょうに重要な攻撃です。しっかり突きを打てないと、なかなか強い蹴りは入れられません。蹴り技が得意な緑代表も、突きを強化したことで蹴りが生きるようになったそうです。突きを強くすることで蹴りが決まり、蹴りが生きることで突きも生きるようになるのです。  
しっかりとした突きを打つためには、適切な腰の位置を取ることが大切です。突きを打つ時は、必ず腰を落とす。これが基本です。 
また、足を踏み込んでから突くということも基本です。33ページでも説明していますが、足が出ないと上体がつんのめって、強い突きが打てません。上半身同様、下半身の動きにも気を配りましょう。  
突きにはこういった基本があるのですが、疲れてくると腰が浮いたり、足が出なくなってしまうことがひじょうに多いです。そうすると強い突きは打てず、蹴りも入らなくなってしまい、どんどん調子が悪くなってしまうのです。突きの調子は、あなたの調子のバロメーター。しっかり。強い突きを打てるようになってください。

”攻”と”受”のアイコンについての説明

このページで紹介する技術は、次の2つに分けることができる。
身につけたい技術を探す参考にしよう。

攻
自分から仕掛ける攻撃
受
相手の攻撃に合わせるカウンター

突きの基礎知識

突きを稽古する前に、これだけは知っておこう!

STEP1
拳の握り方

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@A小指から順番に折り曲げていき、B親指の力を抜いて添える。親指の第一関節と、小指の第二関節で、間の3本の指を挟むようなイメージで握りこもう。中指が。少し突き出るように握ること。



STEP2
拳のどこで殴るの?

STEP3
拳の開き方は?

人差し指と中指の拳頭(写真の囲み部分)で殴ること。変な場所で殴ってしまうと、拳を痛めることがあるので注意しよう。

 

拳を開く時は、小指はしっかり、親指と薬指は軽く曲げておこう。こうすることですぐに拳を握ることができ、相手の攻撃をうまくさばくこともできる。



パターン3
三戦立ちからフォームチェック

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@三戦立ちになり、A片足を一歩引いて半身になり、拳を返す。この構えを、スムーズに取れるようになろう。B腰の位置が適切な高さにあることで下半身が安定し、しっかりと体重の乗った突きを放つことができる。



パターン5
足をしっかり踏み出そう

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突きを打つ際は、@のように足をしっかり踏み出してから打つこと。上体の動きを意識するあまり、足の踏み出しが遅れてしまうと、Aのように前のめりになり、強い突きが打てなくなってしまう。




突きの基礎テクニック

突きの基本的なバリエーション

パターン1 攻
下突き

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@近い間合いで、Aヒジを持ち上げるようにして腕を引き、B腰から回して素早く腕を振って突く。狙う箇所に対し、拳が垂直に当たるように気をつけること。また、下から上に拳を持ち上げるのではなく、打ち抜くような感覚で前方に向けて突くことも大切だ。Cで打ち込んでいるみぞおちのように、体の中心には急所が集中している。急所を突く、的確な攻撃を仕掛けよう。



パターン2 攻
鍵突き

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鍵突きは、背中から脇腹にかけたあたりを狙う。とくに右脇腹付近には急所のレバーがあるので、左の鍵突きをうまく使おう。@構えた状態から、A外側の足に体重を乗せて上体をやや傾ける。相手の奥足が、自分の股の正面に来るような位置取りをすること。B振りかぶって、C鍵突きを叩き込む。Dもしくは、拳の角度を変えてもいい。こちらはフォロースルーで打ち抜く際に力が入りやすい一方で、力みやすい。どちらが使いやすいか、チェックしてみよう。



パターン3 攻
相手の体勢を崩す直突き

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フォロースルーを効かせた突きで、相手の体勢を崩す。@構えた状態から、A直突きを見舞う。Bさらに肩を入れてフォロースルーを効かせる。この感覚は、拳立て伏せで肩をロックする時の感覚に近い。また、慣れないうちは2発連続して打って感覚を養い、それから単発で打つようにしてみてもいい。Cのように、首下にある逆三角形のくぼみあたりを狙うと、相手の体勢を崩しやすい。Dのように、奥足と拳だけで体を支えられるくらい体重を乗せよう。



パターン4 受
下段蹴りへのカウンター

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突きのカウンター攻撃では王道とも言える技術。@構えた状態から、A相手が下段蹴りのモーションに入った。同時に前に出る。この時、足から先に出ること。頭が足より前に出てしまうと、下段蹴りを効かされてしまうので注意。B下段蹴りのヒットポイントをずらすことで、相手の足が上に滑る。踏み込んだ勢いを利用してカウンターの突きを叩き込む。



パターン5 攻
奥足の蹴りからつなぐ突き

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蹴りの直後に突きを放つことで、途切れない攻撃を仕掛ける。@構えた状態から、A奥足の前蹴りを見舞う。B取り足の足先を相手側に向けつつ真下におろし、Cすかさず突きを見舞う。蹴り終わりには相手が反撃をしてくることが多いので、それを止めることができる。



パターン6 攻
前足の蹴りからつなぐ突き

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奥足の蹴りからつなぐ突きと、基本的には同じ流れで繰り出すコンビネーション。奥足の蹴りと違うのは、Aで繰り出している下段蹴りが、けん制としての目的が大きいということ。相手の動きの“さぐり”として、使い勝手のいいコンビネーションだ。



パターン7 受
ヒジ受けからのカウンター

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片手だけで行なうカウンター攻撃。@相手が下突きを打ってきたので、Aヒジ受けで防御。Bすかさず、ヒジ受けした腕で下突きのカウンターを見舞う。ヒジ受けをしない側の腕を前方に出しておくと、懐が深くなるのでカウンターを取りやすくなる。




パターン4 受
相手の受けを誘う突き

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相手の受けを誘い、そこにカウンターを返す突き。@構えた状態から、Aまずは動作を大きめにした正拳突きを仕掛ける。これは相手に受けさせていい。B狙い通り、相手が突きをさばいてきた。こちらが大きな動作で突くと、相手の受けも大きな動作になる。C相手が反撃を狙ってくることもあるので、D素早く返しの突きを叩き込む。大きな動作で突くことは、慣れないうちは反撃される恐怖心も付きまとう。パターン稽古を繰り返し。恐怖心を取り除いていこう。




応用テクニック

匠が伝授する試合で役立つスペシャルテクニック

パターン1 攻
スイッチして放つ突きの連打

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突きをかわした相手を、スイッチしながら追いかけるコンビネーション。@構えた状態から、AB踏み込んで突きを放つ。が、これがかわされてしまった。Cすかさず奥足を前に出してスイッチし、DE突きを見舞う。スイッチしながら前に出つつ連続攻撃を繰り出し、相手を徐々に追い詰めていく。何発か繰り出しているうちに、相手は必ず反撃してくる。反撃のタイミングを見切りつつ、連続攻撃で自分のリズムをつかもう。



パターン2 受
相手が攻撃しにくい位置からの突き

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攻撃をする際、必ず必要なことが体重移動だ。相手の体重移動のタイミングを見極め、死角を突く攻撃。@構えた状態から、A踏み込もうとしたところで相手が蹴りのカウンターを狙ってきた。パターン稽古をあらかじめ繰り返しておくことで、相手の蹴り足に体重が乗るタイミングを見極める。そのタイミングに合わせ、自分も踏み出す。B蹴り足の外側に回り込む。相手の蹴り足が、自分の股の間に来るような位置取りをする。この位置だと相手は両足がそろい、攻撃をしにくくなる。C無防備な相手に突きを見舞う。カウンターへのカウンターとなる、上級者向けのテクニックだ。この技のポイントの一つが、相手の体の中心を狙える位置を取ること。Dは、急所が集中している正中線(写真上のライン)が正面にないため、狙いにくい。Eのように、正中線を正面に据えた位置取りも意識しよう。




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